家庭で語れぬバイト遍歴・番外編 ~土方バイトから一転、夜はホスト兄さんの舎弟として繰り広げた“成果ゼロ・恥だけ山盛り”の夏~

前回からのつながり

第5話では、えー、産廃処理場で軍手に泣き、さらにはパワーショベル暴走未遂という、自虐と危険が渦巻いた日々をお届けしたわけであります。今回はその続きであります。舞台は一転して夜。昼間は土方で汗にまみれ、夜は兄さんのクラウンマジェスタに乗ってカーナンパへ。えー、大学生最初の夏休みは、昼と夜で全く違う顔を持つ二重生活でありました。

ホスト風兄さんの登場

夏休みに地元へ帰省していた私。えー、幼馴染を通じて出会ったのが、6歳年上の兄さんであります。彼は農機具販売を自営しており、昼間はユニックで農機を積んで配達。代金は現金払いで、セカンドバッグには数百万。外見は金髪に金のネックレス、服装はまるでホスト。車はクラウンマジェスタ。グレードはディーゼルでしたが、えー、さすがのクラウン、エンジン音は内外ともに静かでした。

一方の私は、日給5,000円の土方バイト帰り。母に「家じゅうが埃まみれになるから、すぐシャワー浴びなさい」と促され、えー、急いでシャワーを浴びて夕食を食べ、兄さんの迎えを待つ。並んで座れば、どう見ても「ホストと舎弟」。えー、大学生の夏休みとは、ここまで落差の激しいものかと今なら思います。

カーナンパ四大スポット

我々が足繁く通ったカーナンパスポットは全部で4つ。実家のある県に3つ、隣県にエリア最大級スポットがありました。

  • A:市中心駅ロータリー〜駅前通り〜繁華街をぐるりと回るルート。終バスが出た後のバス停には、高校生くらいの女子がベンチに座り、ナンパを待つ姿がよく見られました。
  • B:貨物用埠頭〜産業道路を巡るルート。
  • C:客船が発着する港のロータリー。
  • D:大きな橋の袂に整備された公園で、週末ともなると他県ナンバーの車が集結していました。

どの場所も基本的には同じでありまして、えー、男女ともナンパ目的で車に乗り込み、一夜の遊びを探しに来る。ひとりよりも二人三人のグループの方が取り回しがよく、成功率も高かったです。

ナンパの手口

ナンパのやり方は実にシンプルであります。すれ違いざまに「こんばんわー」と声をかけ、「何しに来てるの?」と会話を始める。場合によっては助手席の私が車外に出て、声をかける役を担いました。最初は照れくさくて仕方なかったのですが、えー、慣れてくると八百屋の呼び込みのように軽快に声が出るようになったのです。

相手が応じれば、閉店後のホームセンターやドラッグストア、あるいはコンビニの駐車場に移動。そこから車を1台にまとめ、カラオケやドライブに出かける──これが定番の流れでした。

カラオケは前座にすぎず

行き先の選択肢は多くなく、深夜の地方都市で開いているのはカラオケくらい。1時間ほど歌って形だけ楽しんだら、あとは何もない郊外へドライブ。その先にあるのは、えー、決まって窓のないホテルでした。この流れはもちろん兄さんと算段済み。カラオケはあくまで前座、目的地は最初から決まっていたのです。

口火を切るのはなぜかいつも私の役目。面と向かって言うのは照れ臭かったのですが、ここまで来て断られたことは一度もありませんでした。

組み合わせ抽選会

問題はどういう組み合わせになるか。最終的にはちょっとした「抽選会」方式でした。運転席と助手席には男性陣、後部座席には女性陣が並ぶ。車を止めて、「せーの!」の掛け声とともに、一斉に組になりたい相手を指さす──そんなやり方でした。

その瞬間の緊張感たるや、えー、まるで公開オーディション。だいたいはうまく1対1に分かれるのですが、一度だけ、なぜか私に集中してしまったことがあります。指先が一斉にこちらを向く──あの光景はいまだに忘れられません。場が気まずく凍りつきましたが、話し合いの末どうにか収めました。あの時ばかりは「なんで俺なんだ」と心の中で叫びつつ、顔は笑ってごまかすしかなかったのです。

警察と実家の塀

夜遊びをしていれば当然トラブルもあります。えー、警察に職務質問されるのは日常茶飯事。私はあえて身分証を持たず、適当にデタラメを言ってやり過ごしていました。今なら完全にアウトですが、当時は「学生だから大丈夫だろう」と謎の楽観主義に支えられていたのです。

さらにある早朝、遊び疲れて帰宅すると家は戸締り済み。仕方なく塀をよじ登り、二階の窓から自室に侵入。その姿を近所に見られていたらしく、後日親父にこっぴどく呆れられました。ちなみに私はこの事態を想定し、実家二階の窓を二か所ほど常時無施錠にしていました。えー、警戒心が高いのか、ただの横着なのか、今でも判断できません。

おわりに

こうして私の大学生最初の夏休みは、昼は産廃処理場で軍手に泣き、夜はクラウンマジェスタでカーナンパ。ホテルインを成功とするなら、声をかけた数からしたらまずまずの戦績だったと思います。

……が、えー、冷静に振り返れば「青春」なんてキラキラした言葉とは無縁でありまして、実際は土方で汗まみれ→夜はホスト兄さんの舎弟→警察に職質→親父に呆れられる、という残念フルコース。得たものといえば武勇伝にもならない自虐ネタだけ。まさに“成果ゼロ・恥だけ山盛り”の夏休みでありました。

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