えー、皆さん、ある日の午後のことでございます。インターホンが鳴ったんですね。
こんな時間に誰だ?と、いつも通り視力の代わりに鋭くなった第六感を働かせながら対応したわけでございます。
そしたら、「近くで道路工事があるので、車両の通行にご迷惑をおかけします。そのご挨拶に伺いました」とのこと。
なるほど、それなら仕方ない。おもてなしの心をもって、玄関に向かったわけでございます。
出てきたのは、若い女性と中年の男性。ここまでは普通。
ですが私、決して見えておりませんが、嗅覚と勘には自信がございます。
「どのあたりで工事があるんですか?」と聞いてみたところ、「いや、少し離れてるのであまり影響はないかもですね」などと、お茶を濁した答えが返ってきた。
えぇ、ここで違和感を覚えたんですね。私の目には映らずとも、心の目が「これは怪しい」と訴えておりました。
そして話題はいつのまにか“災害時の備え”へとスライド。
「ところで、家庭用蓄電池ってご存知ですか?」と来た。来ました、核心部分。
「知ってるけど興味ゼロ」と、私はキッパリとお伝えしました。
ええ、どんなにオブラートに包んでも、「興味がない」という事実は変わりません。
すると彼女たちは、あっさりと引き下がっていった。
やれやれ、一件落着──と思いながら、私はリビングで愛犬のうんちを片付けていたんです。
こういう時に限って、彼女はいつもより大きめの仕事をしてくれるわけでして。
視力ほぼゼロの私が、鼻と指先を頼りにリビングを四つん這いで這い回る姿は、もはや家庭内ロールプレイングゲームでございます。
毎回“うんち”との闘いに勝利しても、勇者の称号はもらえません。
そんな中、再びインターホンが鳴ったわけであります。
いやー、このテンポ感、さながらテレビドラマの2時間スペシャルでございます。
今度は営業担当らしき人物が登場。
話すわ話すわ、災害リスク、避難所の収容率、自宅避難の現実、蓄電池の重要性、補助金制度……
とにかく、「今契約しないと地獄を見ますよ」的な、恐怖のゴリ押しトークが炸裂。
これはもう、営業ではなく“先制攻撃”であります。
そこで私、ふと思い出したんです。先日書いたブログタイトル──
「話の迷路に人生を見る──もはや長話は戦術」
彼の言葉の10倍の熱量で、こちらも反撃いたしました。
石破首相口調で彼の発言を一つ一つ復唱しつつ、そこに私の生活哲学、家庭内トラブル、時事問題までぶち込みながらの反論独演会。
激闘のあまり、うんちの片付けの続きを忘れてリビングに地雷が残ってたのはまぁご愛敬でしょう。
結果どうなったか?彼はただうなずくのみ。
最後には、ただの“目を見開いた置き物”と化し、「何かありましたらご連絡ください」と名刺を差し出して、無言で退散。
見事な勝利であります!
自宅を守る戦い、勝ち抜きました!
──視覚はなくとも、言葉の刀は健在でございます。
目がほとんど見えなくても、心眼と妄想力で敵の急所は突けるんです。
で、振り返ってみれば最初の「工事のご挨拶」。
あれはつまり、在宅確認と様子見だったのでしょう。
しかもこの家、鉄筋コンクリート構造で屋根にはしっかりとした傾斜──まさに「ソーラーパネル設置してください」と言わんばかりの造り。
私は見えないなりにもこの家のデザインを手がけた張本人でありますので、構造は熟知しております。
はい、目はほとんど見えませんが、家の見栄えだけはプロレベル(自称)でございます。
何より悪質だと感じたのは、最初の訪問が「工事の案内」という名目だった点です。
つまり、訪問目的を偽り、チームで連携して“第一接触”と“本命営業”を分ける──これはもう、立派な手口。
信頼などハナっからあったもんじゃないです。
こんな時代だからこそ、ちょっとした違和感を、ちゃんと信じていいのだと思います。
以上、自宅防衛戦争2025夏の陣、報告を終えます。ご清聴、ありがとうございました。
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