いぼ処置と羞恥の診察室 ~見えない場所に潜む敵と私の静かな戦いの記録~

私は、目が非常に悪いのであります。
視力検査の「Cの向き」はおろか、「Cがあるかどうか」すら怪しいレベルです。
鏡に映った自分の顔もぼんやりとしたシルエットにすぎず、もはや「これ、誰?」と毎回思う始末。
ましてや背中やお尻など、肉眼では永久に確認できない領域については、指先の触覚だけが唯一の情報源となっております。
つまり私は、人差し指で生きています。

そんなある日の入浴中。
体を洗っていた私の指先に、妙な“ポツッ”という感触がありました。
「……これは……なんか……いる」
私の中でたまにだけ発動する“異物センサー”が反応したのです。
触ってみると、小さな突起。場所は――肛門のすぐそばでした。

私は、女性に裸を見られる機会が人より少しだけ多い人生を送っております。
さらに、鼠径部や肛門近くに顔を寄せられる機会も、それなりにございます。
そんな状況下で「え?これ……なんかできてません?」なんて言われた日には、私の人間としての尊厳は、もれなく崩壊いたします。

すぐに皮膚科を予約しました。
病院の受付で渡された問診票。目が悪い私に代わって、妻に代筆をお願いすることに。
「肛門の横にいぼがあるって、書いて……」
妻は無言でペンを走らせました。ええ、表情には触れません。見えませんから。

診察室へ案内されると、先生が一言、「では、お見せください」と。
私はそれを聞くや否や、即立ち上がり、診察室の壁に両手をついて、ズボンとパンツを下ろしました。
そして静かに、肛門を突き出しました。
この動作に、言葉はいりません。プロ同士の無言の連携プレーであります。

さらには、先生に言われる前に、反射的に鼠径部も突き出しておりました。
先生は一瞬の沈黙ののち、「じゃあ、そこも診ておきましょう」と。
もはや私は、診察室という名の舞台で、いぼ総合披露ショーを開催していたのです。

肛門の近くの突起は、やはりいぼとの診断。
私は「ついでに首や腋の下、顔や前頭部、鎖骨や胸骨も気になってまして…」と伝え、診てもらいました。

先生は丁寧に診察しながら、「では、それらも処置していきましょう」と。
こうして、肛門・鼠径部・腋下・首のいぼたちが、液体窒素という冷却地獄へと送り込まれることとなりました。

一方で、胸骨部、鎖骨部、顔、前頭部のいぼやほくろは、やや大きく、液体窒素での処置が難しく、時間もかかるとのことで、今回は治療を見送りました。

処置中は、見えない部位に向かってシューッと吹きつけられる液体窒素の冷気と、羞恥のダブルパンチ。
「冷たい」「恥ずかしい」「でも診てもらえてありがたい」といった感情が、ぐるぐると交錯します。
視覚は弱くても、羞恥心だけは健在でした。

服を整えながら、私は心の中で静かにこうつぶやきました。
「しばらくお遊びはお預けだな……」と。

コメント

タイトルとURLをコピーしました