塾帰りのイタズラ ~声変わり前ボイスでオジサンを翻弄した黒歴史~

前置きであります。

第1話では「公衆電話と怪広告の時代」について語ったわけでありますが──。

実は、この公衆電話を舞台にした私の思い出は、まだまだ続きがあったのであります。ここからが本番と言っても過言ではない。なぜなら、中学生の私には「くだらないイタズラに青春を浪費した黒歴史」が存在していたからであります。

塾通いの道すがら

私が通っていたのは、隣市の駅前にある進学塾でありました。週一回、親に送ってもらい、自宅最寄り駅で200円強の切符を買って電車で五、六駅。普通なら「お勉強に励む健全な中学生」という構図ですが、残念ながら私は違いました。駅ホームの公衆電話を舞台に、頭の中はイタズラでいっぱい。進学塾どころか「進撃の馬鹿」であったのです。

その塾で出会ったのが、目がくりくりした声変わり前の少年。見た目は天使、中身はイタズラ仲間。つまり、私の悪行を加速させる最高の共犯者でありました。

ツーショット冷やかし大作戦

授業が終われば、我々が走る先は駅ホームの公衆電話。彼が受話器を握り、私は横でスクリプトを囁く。役割分担は完璧であります。彼は“実演担当”、私は“脚本・演出担当”。いや、実態は「悪ガキ二人組の即席寸劇団」にすぎませんでした。

「ほんとにオジサン釣れるんか?」と彼が小声で言えば、私は「絶対いける、やってみろ!」と無責任に煽る。開始前からアホ丸出しであります。

そして幕が上がる。「こんばんはぁ〜」と彼が甘ったるく声を発した瞬間、受話器の向こうのオジサンが食いついた! テンション爆上がり! 私は横で「もっと幼い感じで!」「今度は泣きそうに!」と指示を飛ばし、彼は全力で応える。私たちは爆笑をこらえきれず、完全に馬鹿の祭典と化していたのであります。

声変わりの罠

しかし、そう甘くはありませんでした。友人は必死に女性のフリを貫き通すのですが、うわずった声をキープするのは予想以上に難しい。咽喉が重なり合い、ある瞬間ふっと低い声に戻ってしまう。その瞬間、オジサンは「あ、ガキか!」と気づくのであります。

だが我々は懲りません。バレたらバレたで友人は本来の声に戻り、逆に大人を挑発して煽る。挙げ句の果てに勝ち誇ったようにガチャリと切る。こちらも横で腹を抱えて転げ回る。これが私の青春の結晶であったわけですが、結晶というよりもはや「不純物の塊」でございました。

危うさを知らぬ無邪気さ

当時の我々は、それを深刻に考えることもなく、ただのイタズラ、ただのお遊びとして楽しんでおりました。しかし今振り返れば、かなり危ない行為であったのは間違いありません。もしSNS全盛の時代に同じことをしていたら、一瞬で炎上、そして保護者呼び出し不可避。つまり私の青春は“昭和〜平成というぬるい時代”に救われただけなのであります。

おわりに

こうして中学生の私は、塾帰りの駅ホームでツーショットダイヤルを冷やかすという、学力向上どころか人間性低下まっしぐらの遊びに熱中しておりました。オジサンをからかうのに全精力を注ぎ、翌日の授業では眠気と罪悪感に支配される。これぞ、私の青春の「負の投資活動」であります。

第2話は「塾帰りのイタズラ」をお届けいたしました。次回は「網棚チェックと営業妨害」について語らせていただきたいと思います。どうぞお楽しみに。

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