こんにちは。
東京の片隅で、家庭内序列最下位を自覚しながら生きております私でございます。
今回は、我が家の“未来担当”である娘が、イギリスへと旅立つことになったいきさつと、そこに巻き込まれた私の悲喜こもごもについて綴ってみようと思います。
始まりは、週に二度通っている学童英会話スクールから届いた、1通のメールでした。
「イギリス研修プログラム 抽選受付中」という文言に、
「当たるわけないし、申し込みだけしとくか」と軽い気持ちでエントリーしたのが、すべての始まりでありました。
ところがであります。
ほどなくして「当選」という、まさかの通知。
思わず出た言葉は「やったー!」ではなく、
「お金は?」でありました。
まさか当たるとは思っていなかった抽選。
嬉しさと驚きと、そしてほんの少しの焦りが入り混じるなか、
それでも「行かせてあげたいね」という結論は、わりとすぐに出ました。
費用の話より先に、娘の気持ちがちゃんとあったからだと思います。
娘は英会話に関してだけはやたらと前向きです。
算数や理科は「できれば避けたい」という空気を放っていますが、
英語となると目が輝き、スクールでの活動にも前向きに取り組んでいる様子。
「今日は英語の授業、楽しみなんだ」と言う日もあり、親としても思わず背中を押したくなりました。
「パパ、行きたい。行ってみたい。」
そう言われてしまえば、親としてはもう覚悟を決めるしかありません。
「行かせるかどうか」ではなく、
「どうやって支払うか」を考える段階に入ったわけです。
出発は7月30日の0時過ぎ。
空港ロビーへの集合は、その前日の29日21時。
集合時間までの少しの余裕を使って、
娘と一緒に羽田第3ターミナルのお寿司屋さんに立ち寄りました。
「しばらく日本食とはお別れだしね」ということで、
上鉄火丼を注文。娘は「めっちゃおいしい」と言いながら、じっくりと味わっておりました。
旅の実感が少しずつ近づいてくる中で、
その鉄火丼は、どこか儀式めいた一杯でもあったような気がします。
私としては「おいしかったなら、それが一番」と思いつつ、
少しだけ、胸の奥がジンとしたことも、たしかでありました。
それはまるで、映画『幸福の黄色いハンカチ』で、
出所したばかりの健さんがビールをうまそうに飲み、
しょうゆラーメンとかつ丼をオーダーしたあのシーンを見たときと、
同じような感情を覚えた気がします。
余談ですが、かく言う私も、かつてそのシーンに感化されたひとりでありまして、
大学時代、1週間の入院型治験バイトを終えて久しぶりに街へ放たれたとき、
財布にやさしい場末感強めの定食屋に吸い込まれ、
まず瓶ビールを先に注文。手酌でグラスに注ぎ、喉を鳴らしながら一気に飲み干し、
しょうゆラーメンとかつ丼を同時に頼んだことを思い出しました。
もちろん、顔は全然似ておりませんし、視力だって天地の差であります。
空港では、同じスクールの他校のキッズたちと、
その保護者、引率してくれるインストラクターの方々と合流。
我々夫婦はそっと後ろから見守るだけ。親としての役割はここまでです。
さて、フライトから約24時間後、ロンドンに無事到着したとの連絡が入りました。
滞在先は現地の夏休み中の学校のドミトリー。
日本人以外にも、アジア系、中東系、白人、黒人などさまざまな子どもたちと一緒に、
レクリエーションやワークショップを通じて英会話を学んでいるようです。
「楽しそうに過ごしている写真、送られてきたよ」と妻。
現地の様子はすべて、妻の実況解説で把握します。
「背景がレンガで、建物がすごくヨーロッパっぽい感じ。娘は青いTシャツで、超ご機嫌でピースしてる」
…なるほど。脳内再生したらなぜか志村けんになりましたが、たぶん違います。
帰国は8月6日の夕方。成田空港着予定です。
空港で娘をピックアップするため、私たち夫婦で成田まで車を走らせる段取りとなっております。
娘が戻ってきて最初に言うひと言は、「パパ、ただいま」なのか、
それとも「おなかすいた」なのか――それはまだ、わかりません。
もっとも、またまた日本食が恋しいだろうから、
お寿司屋さんに行くことになるのでしょうか。
イギリスでの生活は、きっと彼女にとって忘れられない経験になることでしょう。
そして私は、
家計と向き合いながら、
時に見えない写真を想像しながら、
静かに日々を送りつつ、
帰国の日を楽しみに待っております。
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