前回からのつながり
第4話では、工務店バイトでのIさんの事故、Mさんの気遣い、Aさんの大ぼら話をご紹介しました。今回はその続き。同じ工務店での仕事の中でも、特に強烈な思い出として残っている「産廃処理場」での体験をお話しします。
現場から産廃処理場へ
工務店の仕事には、現場で出た廃材を処理場に運ぶという地味ながら過酷な任務がありました。ダンプに積み込み、山奥の処理場へ。私は免許すらなく、ただ積み下ろしに汗をかくだけ。道路を走れば市役所やパトカーににらまれ、「違法業者じゃないです」と心で叫びながら挙動不審に身を縮めていたものです。
ゴレンジャーのロケ地のような処理場
処理場は山間部にあり、電気も通っておらず、プレハブ小屋が一つあるだけ。そこら中に瓦礫の山が積まれ、まるで戦隊ヒーローの爆破シーンでも撮れそうな光景でした。ダンプで廃材をすり鉢状の穴に流し込みますが、淵は補強なし。荷台を傾けるたびに車体が揺れ、「次は俺が落ちるのでは」と冷や汗が背中を伝ったのを覚えています。
野グソデビューと軍手の悲劇
この処理場にトイレはなく、待機中に腹痛が来れば「どこでもどうぞ」。小ならまだしも、大となれば拭くものがない。瓦礫の山を探し回った結果、見つけたのは泥にまみれた使い古しの軍手。それで拭いたのです。軍手でケツを拭いた瞬間、「大学生なのに、何をやっているんだ俺は」と人生観が揺らぎました。これが私の野グソデビュー。人一倍働くどころか、人一倍不潔を体験していたのであります。
第二の野グソ、空き箱の悲劇
この一件でタガが外れたのか、大学1年の飲み会帰りにも野グソを経験。場所は大学構内のグラウンド脇。学生寮まであと少しというところで腹が限界突破。同行の友人が探してきたのは、アロンアルファか何かが入っていた空き箱。ボール紙とポリカーボネイトで拭いたのです。軍手に続き空き箱。どうやら私は「紙に縁のない男」だったようです。人は二度までも同じ轍を踏む。私の場合、それが「尻」だったのです。
パワーショベル暴走未遂
処理場での待機中、もう一つ忘れられない事件がありました。瓦礫の山に放置されていた大型パワーショベルに、なんと鍵が付けっぱなし。退屈しのぎにエンジンをかけ、アームを動かした瞬間、地面を押した反動で車体が浮き上がる。宙に浮いたときの恐怖は今も鮮明です。慌ててエンジンを切りましたが、一歩間違えれば横転して下敷き。野グソどころか「産廃処理場で即死」という最悪のニュースになっていたかもしれません。
おわりに
こうして振り返ると、私の土方バイトは汗と泥だけでなく、軍手と空き箱の野グソ、そしてパワーショベル暴走未遂まで抱え込む、文字通り危険と自虐の宝庫でした。日給5,000円の裏に潜んでいたのは、現金ではなくリスクと恥。それこそが大学生最初の夏休みの真実だったのです。
そして昼の土方に加え、夜は兄さんのクラウンマジェスタでカーナンパへ──。次回、第6話は「カーナンパ編」。汗と泥と恥に加え、夜の遊びまでセットになった青春をご覧いただきます。
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