前置きであります。
第2話では、塾帰りにツーショットダイヤルを冷やかすという、青春を完全に浪費した黒歴史を披露したわけでありますが──。
馬鹿は止まらない。公衆電話で遊んだあとは、電車に乗り込んでからも、やっぱり馬鹿なことをしていたのであります。勉強よりも新聞漁り、未来よりも笑い。そんな中学生時代の「網棚チェック習慣」を、ここに記しておきたいと思います。
網棚チェックの儀式
当時の私と友人にとって、電車に乗るという行為は「移動」ではなく「狩り」でありました。乗車するや否や、視線は網棚へ。そこに放置されたスポーツ新聞や週刊誌こそ、我々のターゲットであり、戦利品であったのであります。
ページの角が折れ、時に味噌汁の染みがついた新聞を、宝物のように抱えては座席に運ぶ。いま思えば完全にゴミ拾い。しかし当時の我々は、「ゴミではない、歴史資料だ!」とでも言わんばかりの勢いでページをめくっていたのであります。
ボックス席での小さな劇場
当時の電車はボックス席が多く、友人と向かい合って座ることができました。新聞を広げ、互いに記事や広告を指差してはケラケラと笑い合う。大声を出していたわけではありませんが、顔は完全に馬鹿笑い。車窓の夜景よりも、スポーツ新聞の裏面のほうが我々にとっては重要だったのであります。
怪しげな求人、謎の健康食品、インチキくさい情報商材、ダイヤルQ2の広告に加え、風俗店の広告や風俗体験ルポまで並んでいたのであります。真顔で読み上げれば読み上げるほど笑いが止まらず、「人類はこんなものに金を払うのか」と中学生なりに嘲笑していたのであります。今思えば、我々こそ真っ先にカモになりそうな無知で単純な存在だったのに、であります。
営業妨害に加担していたという事実
そんな「新聞漁りライフ」を満喫していたある日、テレビを見て衝撃を受けました。なんと、放置されたスポーツ新聞や週刊誌を拾い集めて安く売る、いわばリサイクルビジネスをしている人が紹介されていたのであります。
そう、我々は彼らのビジネスモデルを根底から破壊する営業妨害を、無自覚のうちに繰り返していたのです。私たちがケラケラ笑いながら読んでいたその新聞は、本来なら彼らの仕入れ商品。中学生2人組は「青春」だの「笑い」だのと勝手に盛り上がりながら、現場経済に深刻な打撃を与えていたのであります。
おわりに
こうして私の中学時代は、公衆電話での悪ふざけに加え、電車内での網棚チェックに情熱を注ぐ日々でありました。進学塾に通うはずが、実際には「公衆電話」と「スポーツ新聞」が私の教育現場。青春エネルギーを勉強に注ぐどころか、完全にゴミ漁りへと投資していたわけであります。
第3話は「網棚チェックと営業妨害」をお届けいたしました。次回は、いよいよアルバイト人生の幕開け──大学生になって最初の夏休み、土方バイトの話をお届けいたします。どうぞご期待ください。
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